インプラント手術は、歯を失った部分に人工の歯根(インプラント)を埋め込み人工の歯冠を被せる手術です。歯茎を切って骨を削るため外科手術となります。
インプラントを実施している川越市内の歯医者さんは約50件あります。(「病院なび」調べ)
インプラントの言葉自体は少しずつ、知名度が上がってきたものの、リスクが全くないわけではありません。今日は、インプラントは本当に安全なのか、想定されるリスクにはどんなものがあるのかを考えていきましょう。
1.インプラントの安全性
(1)素材の安全性
インプラントとは、厳密にいえば骨に埋め込む人工歯根のことを指します。実際にお口の中に見えるものは被せ物と言ったり、クラウンや歯冠と呼ばれたりします。人工歯根を指すインプラントの素材はチタンです。チタンには、骨と強く結合するというとても珍しい特徴があります。また、この素材は人体が異物として認識しないため、体が炎症を起こしたり異物として排除をしようとしたりせずに、体になじんでいくのです。
このチタンという素材は、歯科用インプラントに限らず、人工骨や人工関節、埋め込み型の心臓ペースメーカなどにも使われています。チタンは、体内に入れても錆びることも溶けることもない安全な素材として医療業界で多く使われています。
(2)手術の安全性
手術の安全性を高める為に最も大切なことは、事前の手術計画と準備です。
手術計画には、患者さんとの相談と正確な検査が不可欠となります。レントゲン撮影や口腔写真(お口の中の写真)は、基本中の基本です。外から見た、お口の状態だけではなく、インプラントを埋め込む土台となる骨の状態や厚さ、骨のもろさや持病、また血管や神経の位置を正確に把握することが必要とされます。状態をよく確認したうえで、治療方法について患者さんと相談することができます。
そのために、私たちはインプラントをするうえで、事前のCT検査は必須と考えています。平面ではなく、立体でお口回りの状態を確認する必要があるからです。
十分な検査もなくインプラントを勧めてきたり、現存する歯を抜いてまでインプラントにさせようとしたりする歯医者さんには、要注意です。
手術準備には、清潔に整った手術室や手術に使う器具の滅菌など、徹底した感染予防をするために高度な滅菌状態が必須となります。インプラントを検討する医院では、普段から整理整頓が行われているか、衛生士さんや歯科医が患者さんごとに手袋を交換しているかなどを見て、院内の意識を確認してみることもできます。
(3)症状別の治療が必要な例
基本的なインプラントの手術法には1回法と2回法があります。それぞれ特徴がありますが、1回法はインプラントを埋め込むあごの骨の密度が高く、十分な硬さと厚みがあることが条件となります。
インプラントを埋め込むのに必要な骨の量は、およそ6ミリの幅と10ミリの高さが必要です。これよりも骨の量が少ない場合、インプラントを支える力がないために、ぐらついたり抜け落ちてしまったり可能性があるのです。
骨の量が少ない患者さんにとって、インプラントの手術の前に必要となるのが骨移植という治療です。例えば骨移植にはG.B.R法(骨誘導再生法)と呼ばれる治療法です。骨が失われた部分に、人工骨や自家骨(自分の骨)を移植することで骨組織の再生を促す治療法です。G.B.R法は成功率が高く、骨が足りない、不足しているという方にもインプラントを適用させることができます。
他にもソケットリフト、サイナスリフト法など患者さんのあごの骨の状態によっていろいろな治療法があります。
(4)手術後の安全性
インプラントは、外科手術です。そのため、麻酔をしての手術となります。麻酔が切れる前は、頬や唇に感覚がないのでぶつけたり噛んだりしないように心がけましょう。
また、麻酔が切れた後は、傷口が治るまで少し痛みがあります。治るまでの間に、細菌や異物が傷口に入ってしまうと、炎症が起こることもあるので、清潔に保つことが大切です。特に、手術直後は強いうがいも避けましょう。傷口のかさぶたがはがれ、再び出血する可能性があります。
炎症を止めたり、細菌を殺したりする抗生物質などがありますので、処方された薬は全て飲みきるようにしましょう。(痛い時に飲む痛み止めなどは別)血行が良くなるような入浴や運動(傷口から再び出血の恐れがあります)、または傷の治りを遅くする喫煙は避けるようにしましょう。
インプラント手術はほとんどの場合、術後に傷口から炎症が起こらないように、清潔に保つこと、炎症を止める薬を正しく服用することに注意していれば、危険なことはありません。
2.実際に想定されるリスク
どんなことにおいてもそうですが、インプラントも絶対に失敗はないと断言することはできません。以下は過去に事例としてあったものです。
(1)動脈の損傷による大量出血
(2)神経損傷が原因の麻痺やしびれ
(3)埋入したインプラントのぐらつき・脱落
動脈や神経はCT検査によって正確に位置をとらえることができます。いずれも事前の検査をしっかりとすることで防げるリスクです。
また、インプラントはしっかりとした骨の土台が必須となります。状態が悪い歯はそのままにせず、きちんと治療するように心がけましょう。
3.それでもインプラントが選ばれる理由
(1)安心できる噛み心地
インプラントは危険で、他の治療法は安全と言えるのでしょうか。ブリッジは一つの歯を整えるために隣合わせた歯を大幅に削ることになります。また入れ歯は、患者さんの歯茎の状態が変わるたびに、違和感が生じ慣れるのに時間がかかってしまいます。我慢が必要となる治療法で、噛む力も大幅に低下してしまいます。
その点で、インプラントは最も自然の歯に近い噛み心地を回復することができます。あごの骨が独立した歯を支えるという仕組みが自然の歯と同じだからです。せんべいなどのある程度硬いものも噛むことができます。今まで通り歯磨きをするだけで、付け外しの煩わしさ、我慢や忍耐が必要なくなります。
(2)他の歯への影響力
総入れ歯は別ですが、部分入れ歯の場合は隣にある歯に金具を掛けて使用します。そのため、隣の歯に負担をかけてしまうことで、健康な歯の寿命を縮めてしまうことになります。ブリッジは、入れ歯よりも固定される安心感がありますが、隣の歯を大きく削ってしまうことにデメリットがあります。固定されることで、装着後にプラークなどの汚れが取れにくくなってしまうのです。歯周病が悪化してしまう大きな要因となります。
インプラントは、他の歯の支えがなくとも自立して丈夫な歯を維持することができます。他の歯を傷つけることなく新しい歯を付けることができます。隣の歯との繋がりもないので、汚れがたまりやすくなることもありません。他の歯への影響力だけで考えると圧倒的にメリットが大きいのがインプラントです。
(3)半永久的に使える
インプラントの素材は、ロケットや航空機に使われるほど丈夫で頑丈なチタンです。錆びることも溶けることもなく半永久的に存在することのできる素材となっています。チタンは身近なところでは、アレルギーを起こしにくいということでピアス、頑丈だということで自転車やスポーツのラケットなどにも使われています。
また、インプラントに限らず、骨が折れたときに人工骨や人工関節としても使われています。体内にとって害を与えない素材であり、丈夫であるため、大切にすると半永久的に使用することができます。
今回は、インプラントの安全性についてご紹介しました。いかがでしたか。インプラントはリスクがゼロなわけではありません。
しかし、それでもインプラントが選ばれている理由を考えてみてください。付け外しがない、他の歯の健康を守る、変わらない食生活を送ることができるなど、生活を守るメリットが多くあります。
自分はできるだろうかとお考えの方は、ぜひ信頼できる歯医者さんに相談してみてください。「骨の量が少ないから、できない」と言ってくれる歯医者さんは、闇雲に大丈夫ですというよりも信頼できる歯医者さんです。その場合は、骨移植ができる技術の持った別医院を紹介してもらうことができます。
私たちプラザ若葉歯科では、他の医院で断られた患者さんのご相談も承っております。どうぞお気軽にお声がけください。
鶴ヶ島市の真ん中にあるプラザ若葉歯科では、今日も元気に診療中です。