インプラント治療費は、保険治療が認められていないため、窓口支払い額が高額になってしまします。しかし、医療費控除の申請を行うと、支払った税金が返ってくるということをご存知でしょうか。インプラント治療は、満足度も高い治療方法となっていますが、決して安い金額ではありません。支払った税金が少しでも戻ってくるとすれば、とても嬉しいですよね。
今日は、インプラント治療費と確定申告、医療費控除についてお話しします。
1.医療費控除の手続き時期
まずみなさんにお伝えしたいことがあります!多くの方が勘違いをしているのですが、
医療費控除の手続きは、確定申告以外の時期にも行えます。
基本的に日本では、所得税の課税期間は1月1日から12月31日までの1年間を対象としています。そして翌年の2月15日~3月15日が確定申告期間として定められていますが、この期間は原則として事業者や個人が所得を申告することによって、納税を行う人が対象となるのです。税の納付については翌年の3月15日までが期限となっているため、それまでに書類を準備しなければいけないと焦っている方も多いのですが、控除を申請することで支払った税金が戻ってくるための還付申請には、納税期限とは別に5年の期限が設けられているのです。
つまり、医療費控除の申告は確定申告の時期に関係なく、年中受け付けているのです!!確定申告の時期に行うメリットは、市役所や出張所などで手続きができるということだけです。
インプラント治療をはじめとした医療費控除に限らず、還付となるものの申請は税務署が開いている時間であれば、1年中いつでも申請できます。もちろん、住宅ローンなどの対象者(住宅借入金特別控除)、ふるさと納税者(寄付金控除)なども、還付の申告は同様に翌年から数えて5年目まで申告期限があります。
具体的にご説明しましょう。
今年(平成31年)の3月15日が申請期限となる医療費控除の対象
経過年数 | 対象期間 | 申請期限 |
---|---|---|
5年前 | 平成26年1月1日~平成26年12月31日 | 平成31年3月15日 |
4年前 | 平成27年1月1日~平成27年12月31日 | 平成32年3月15日 |
3年前 | 平成28年1月1日~平成28年12月31日 | 平成33年3月15日 |
2年前 | 平成29年1月1日~平成29年12月31日 | 平成34年3月15日 |
1年前 | 平成30年1月1日~平成30年12月31日 | 平成35年3月15日 |
1年間に支払った医療費の金額が1世帯で10万円を超える時に、かかった医療費を医療費控除として申告することができるのです。
例)
平成26年1月1日 | インプラント治療代として医療費を支払う(30万円) |
平成26年3月15日 | 確定申告が終わってしまった―!→諦める |
~5年経過後 | |
平成31年2月某日 | 遡及ができると知る |
平成31年3月13日 | 5年前の医療費の申請をする |
2・3週間後 | 平成26年分の医療費控除による税金の還付金を受け取る!! |
インプラントは1本10数万以上かかってしまう治療です。ちょっとの申請で所得税が還付され住民税が安く抑えることができるのです。医療費控除の申告時期は、翌年1月1日~5年後の3月15日まで。5年前まで遡って、医療費の控除申請を行うことができるので、申告期限を過ぎちゃったと諦めずに、申請してみてください。
2.医療費控除の申請によって戻ってくる税金
1で説明したように、5年前まで遡って申請をすることもできますが、ここでは治療費が発生した翌年の3月に医療費控除の申請を行った前提として、考えてみます。
医療費控除の申請でお得になるものは次の2つです。
- (医療費を支払った年の)所得税の還付
- (医療費を支払った翌年の)住民税の減額
どうお得になるのかご説明します。
通常、1年間の個人の所得は翌年の3月15日までに確定し、所得税を支払います。納税額を決定したり、調整したりするために行われるものが年末調整と確定申告なのです。
全ての収入のうち、社会保険などに支払った額を差し引き、医療費控除を含めた控除を受け、税金を計算するもとの金額を導き出す必要があります。その金額が課税所得と呼ばれるもので、税を決定するためにとても大切な基準です。
所得税は国税、住民税は地方税に当たり全く別のものですが、ほぼ同じ課税所得額を目安に算出されます。
実際にはどれくらいお得になるのでしょうか。
医療費控除の申請をした場合、しなかった場合を比較して実際の金額を比較してみましょう。
35歳独身 年収400万円
35万円のインプラントをした場合の目安
医療費控除申請を行わない場合 → 税額合計 260,000円
所得税 | + | 翌年の住民税 | = | 税額合計 | |||
85,000円 | + | 175,000円 | = | 260,000円 |
課税所得 | 税率 | ||||
所得税 | 170万円 | × | 5% | = | 260,000円 |
住民税 | 170万円 | × | 10%+均等割5,000円 | = | 260,000円 |
インプラントの治療費を医療費控除申請した場合 → 税額合計 227,500円
課税所得 | 税率 | ||||
所得税 | 155万円 | × | 5% | = | 77,500円 |
住民税 | 170万円 | × | 10%+均等割5,000円 | = | 175,000円 |
課税所得 | 税率 | ||||||
住民税割引 | 25万円 | × | 10% | = | -25,000円 | ||
[医療費控除額] | × | [住民税率] |
[1年間の医療費] | ― | [保険等で補てんされる額] | ― | [10万円または、所得税額の5%] | ||
350,000円 | ― | 0円 | ― | 100,000円 | = | 250,000円 |
所得税と翌年の住民税を合算した合計の税金には、32,500円もの差が生まれました。
所得税の還付によって帰ってきた金額 | 7,500円(85,000円 ― 77,500円) |
住民税の割引によって得られた金額 | 25,000円 |
確定申告時期に医療費控除の申請によって還付される金額は、所得税の減額変更によるものなので、7,500円(85,000円―77,500円)と思ったより少ないかもしれません。
しかし、翌年に賦課される住民税の割引額は、以外にも高いのです。還付される所得税の金額のみに注目してしまいますが、住民税の割引額が大きいことも覚えておいてください。
実際の控除額、税額は個人・家族の状況により変動しますので、参考程度にしてくださいね。
詳しい医療費控除の仕組みについては、こちらも参考にしてください。
3.年末調整での医療費控除申請は可能?
確定申告も年末調整も1年間に得た収入から、払うべき納税額を計算し調整するという役割では同じです。しかし、年末調整では、対象となる控除の種類に制限があり、医療控除はその対象となっていないため、年末調整での医療費控除は行うことができません。
年末調整で取扱っている控除
- 扶養控除
- 障害者等の控除
- 配偶者控除と配偶者特別控除
- 各種の保険料控除
- 住宅借入金等特別控除
確定申告または、自己申請が必要な控除
- 医療費控除
- ふるさと納税などの寄附金控除
- 雑損控除
先ほども触れましたが、医療費控除の申請は、翌年の確定申告時期に限らず、5年後まで3月15日まで税務署で受付が可能です。
4.医療費控除の対象となる治療内容
なかなか知られていないものの、医療費控除に加算できるものは意外と多いです。保険診療だけに限らず、自費診療となるものの多くが含まれます。インプラント治療はもちろん、その他の歯科診療のためにかかった治療費、公共交通機関による交通費も対象となります。
出産にかかる費用も対象となります。(出産一時金の申請もお忘れなく。)歯科領域で行けば、インプラントはもちろん、保険外の被せ物の費用、入れ歯などの費用も対象となります。
- 病院・歯科医院での治療費
- 医薬品の購入費用
- 通院のための交通費(公共交通機関のみ)
- 出産費用
詳しくは国税庁ホームページをご覧ください
5.医療費控除の申請は翌年の4月末までが目安
インプラントは大きな安心を得られる一方、コスト面でも負担が大きなものです。医療費控除の申請をしっかりと行うことによって、所得税の還付金がもらえます。そして、なかなか気が付きにくいですが住民税が大幅に減額されているということも大きなメリットとなります。
医療費控除の申請によりお得になるものは、所得税と住民税の2つ。しかし、全前年以前の分の医療費控除の申請は、翌年に行うよりも少々手間になります。税務署で申請を行い、後日市町村から通知書(「還付通知書」や「過誤納金還付通知書」など)を受け取り、その中にある「過誤納金還付請求書兼振替依頼書」に記名・捺印をして、送付。後日「過誤納金」といい、「還付加算金」という利息分がついて戻ってくるというしくみです。翌年に申告するだけよりも手間になってしまいます。
翌年の住民税が確定するまえの4月頃までは、医療費の申請を行うことをお勧めします。
インプラントという大きな安心を手に入れると同時に、かかってしまったコストを少しでも抑えることができれば、ハッピーな気持ちはさらに大きくなりますね。
ぜひ、医療費控除の申請を還付申告によって行い、お得を実感してください。