インプラント治療の痛み

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さて、より身近になってきたインプラント。私の周りでも、インプラントに興味を持って、個人的に尋ねられることが増えてきました。身近な治療法として少しずつ一般的になってきてはいますが、やはりインプラント治療が初めての方にとって、踏み出すにはほんの少し勇気が必要かもしれません。

今日は、歯科治療にとって不安要素の一つである、痛みについてお話しします。どういう時に痛みを感じるのか、どのような処置方法があるのか、具体的に解説いたします。

1.インプラント治療で痛みが出るのはどんなとき?

インプラント治療は、外科手術を伴うため麻酔は必須となります。麻酔にもいくつか種類がありますが、抜歯などに使っている局所麻酔をすることが一般的です。麻酔の効果が効いている間は、触られている感覚があるくらいで、痛みはほとんどありません。治療したところが痛くなる可能性があるのは、以下の4つのタイミングです。

(1)手術後

インプラント後に麻酔が切れたら、痛みはやってきます。術後2~3日は治療した部位に痛みが出ます。そのため、痛みを和らげるための薬が処方されます。インプラント治療後の痛みは、抜歯したときと同じくらいと言われています。

治療後の痛みをコントロールし、早く治すためのお薬です。処方される代表的なお薬は【痛み止め】、【化膿止め】、【炎症止め】です。それらすべてに意味があるので、決められた用法・容量を守って、飲み切るように言われたお薬は最後まで飲んでください。

私は、中学生のときに親知らずを一本抜いたのですが、抜歯した当日の夜、痛みがとても激しくてフラフラと貧血を起こしたことがあります。大人になってまた別の親知らずを抜きましたが、その時はあまり痛かった覚えはありません。医療や薬の進歩ってすごい!

(2)人工骨移植後

インプラントを顎の骨に埋めるためには、顎の骨の厚みと密度が高いことが条件となります。

しかし、歯がなくなってから時間がたってしまった人や、歯周病の影響により顎の骨まで浸食されてしまった人は、頑丈で十分な厚みのある顎の骨を持っていない場合が多いのです。そういった方のために、顎の骨を増やす手術があります。不安定だった土台を安定させることで、インプラント治療も安全に行え、インプラントの寿命も伸ばすことができます。

こちらも、抜歯やインプラント埋入時と同じく局所麻酔を使用します。局所麻酔を使い、患部の処置を行うので、治療後麻酔の効果が切れると傷としての痛みを感じるようになります。処方された薬を飲むことで、インプラント術後同様に痛みは緩和されます。

(3)抜糸時

怪我をして、皮膚を縫ったことがある方なら、一度は経験する抜糸。歯科医では、抜歯と言い方を区別して、あえて抜糸のことを「ばついと」呼んでいます。インプラント後に歯ぐきの縫合をするために縫うのですが、傷が治った後に糸は不要なので糸は外します。

インプラント手術後、1週間程で抜糸をします。抜糸をするときは、するすると抜けるため痛みはほぼありません。糸の違和感を痛みだと感じる人もいますが、治っている患部に糸が触れて抜けていくような感覚と思っていただければ問題ありません。

昔、小学校の校庭の遊具から転倒し、唇の下を12針縫いました。私は怪我をして縫われるときよりも、なぜか糸を抜くときの方が怖かったのですが、終わってみるとぜんぜん痛くありませんでした。抜糸が痛くなかった!という驚きを、今でもよく覚えています。

(4)インプラント周囲炎

インプラント治療を行った後は、必ず気を付けていただきたいのがこのインプラント周囲炎です。インプラントの歯周病と呼ばれており、インプラントの周囲に細菌が広がることで、周りの組織を溶かしていく病気です。インプラントには、神経が通っていないためこの病気にかかっても相当悪化しない限り、痛みが出ることはほぼありません。インプラント周囲炎で痛みが出るとしたら、インプラントではなくその周りに細菌が広がってしまうことで痛みが生じます。

インプラント周りの歯ぐきが腫れてきた、歯と歯の隙間が広がってきたと感じたら、早めにご相談ください。これは、正しいメンテナンスで防ぐことができるものです。

2.治療後に痛みが出てきたら?

インプラント手術後は、一時的にインプラントを埋め込んだ場所が痛むことがあります。痛みの感覚は、個人差が大きいものですが、治療後に痛みが出てきた場合にはどうしたら良いのでしょうか。

(1)薬の量を増やす

インプラント治療後、炎症止めなども含めた薬が必ず処方されます。それらは、食後に服用するものと、痛みが出てきたら時に服用するものがあります。痛みが強くなりそうだな、耐えられないなと思った時は、注意事項を守り処方された痛み止めのお薬を飲んでください。

(2)痛い部分を冷やす

血の巡りが良くなると、傷の治りも早いのですが、神経も活発に作用するため痛みをよく感じるようになります。血の巡りは温度と良く関係していて、体温が高いと血行がよくなり、体温が低くなると血の巡りが悪くなります。痛みがある部分を冷やすことで、血の巡りが遅くなり、痛みを過敏に感じていた神経も穏やかになるのです。そうすることで、痛みが落ち着きます。

これは、歯の痛みだけでなく捻挫や打撲などの痛みの場合も有効です。

(3)血行が良くなることを避ける

怪我をして病院に行った後は、今日はお風呂ではなくシャワーを浴びてくださいと言われることがあります。それは、血の巡りと痛みに深く関係があるからです。お風呂に入ったり、激しいスポーツをしたり、活動するだけで体がポカポカしてしまう行動は、手術後にはふさわしくありません。これらの行動をして、痛みが生じるのであれば、安静にしてください。患部を冷やし、落ち着くことで痛みも引いていきます。

(4)タバコや飲酒を止める

ほとんどの歯科医院では、インプラント治療前より禁煙するように求められます。喫煙により毛細血管が細くなり、インプラントが顎の骨と結合しようとする働きを弱めてしまうのです。そのため、インプラントの定着が遅くなったり、場合によってはインプラントが外れてしまうことも考えられます。傷の治りも遅くなるため、インプラント治療中のタバコは絶対にやめましょう。

また、お酒も控えたほうが良いです。お酒を飲んだら体が温かくなるように、お酒は血行を良くする働きがあります。勢いよく血がめぐるため、痛みをよく感じるようになります。

(5)使用している薬を変える

冷やしても、安静にしていても、処方された痛み止めを飲んでも痛みが治まらない場合は、薬との相性が悪い場合があります。手術を受けた医院に相談をし、他のお薬を処方してもらいましょう。

たいていの場合は、2~3日で痛みは引きます。1週間以上、痛みが続く方は、何かしらの 問題が起きている可能性があるので、主治医に必ず相談に行くようにしてください。

3.インプラント治療時に使う麻酔って?

インプラント手術では、歯ぐきを切開し、歯を支える骨に穴を空けます。もちろん、麻酔を一切しないと、ものすごい激痛が走ることでしょう。手術時は、これらの痛みを感じないように完全にコントロールされています。麻酔の技術も含めて、インプラント手術なのです。

インプラント治療に使用される麻酔は「局所麻酔」と「静脈内鎮静法」があげられます。

(1)局所麻酔

インプラント手術で一般的に使用される麻酔です。痛みの軽減が目的の麻酔で、感覚を麻痺させます。口の中を治療される感覚はありますが、痛みは全く感じません。この麻酔だけだと、意識ははっきりとしています。

インプラントだけではなく、抜歯や虫歯治療にも使われているものなので、安心して受けていただければと思います。

(2)静脈内鎮静法

こちらは、「リラックスしてもらう」ことが目的のお薬です。リラックスし心をほぐすことで、緊張や恐怖感を和らげることができます。こちらには、痛みを和らげる効果はありません。

インプラントに、恐怖や緊張を感じてしまう人は、静脈鎮静法を併用することで、安心して手術に臨めるかもしれません。

どんな怪我や体の不調もそうですが、痛みは体の危険を教えてくれるために生じます。そのため、体は傷がついたり、炎症が起きたりすると、それを知らせるために痛みが起きるのです。痛みは「ここに、傷があるよ。」と教えてくれる証拠。痛い場所がわかれば、その部分を丁寧に扱うことができますよね。痛みの種類や、状況を良く知っておくことで、上手に付き合っていきましょう。

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