インプラントには歯がない期間があります
失った歯の代替治療として行うインプラント。他の代替治療よりも噛める力も強く、長持ちし、他の歯に悪影響を及ぼしにくいという大きなメリットがあります。しかし、インプラントは、治療開始後からすぐ噛めるようになる歯が完成するわけではありません。一般的に、インプラント治療を開始するまでと、インプラント治療中にはそれぞれ「しっかり噛むことができる歯」がない期間が存在します。
インプラント治療が完了し、しっかりと噛めるようになるまで、歯がない期間がどれくらいあるのか、またどのタイミングであるのかを簡単にご説明します。
目次
1.歯を失った原因別にみるインプラント治療の準備と歯がない期間
歯を失うには、大きく分けて3つの原因があります。それは、歯周病と虫歯、歯の根っこが折れてしまうことの3つです。インプラント治療では、歯を失っている方すべてに同様の治療準備をするわけではありません。ここでご説明をする歯がない期間というのは、しっかりと噛める歯がない期間を指します。後述となりますが、ほとんどの場合は、患者さんのご希望に応じて仮歯を作ることができます。(3.歯がない期間の対応策 をご参照下さい)
(1) 歯周病 抜歯後インプラント治療開始までの歯がない期間
《9ヶ月~1年:歯周病の治療 3ヶ月~半年 + インプラント治療 約半年間》
歯周病で歯を失ってしまった場合、歯茎と歯槽骨と呼ばれる歯の土台となる骨が歯周病菌によって浸食されています。その状態のままインプラント治療を行っても、歯周病菌の進行は止まるわけではありません。
歯周病の場合は、まず歯周病の進行をストップさせることが必要です。歯周病の治療中は、ずっと歯がない状態が続きます。歯を失ってしまうほどに歯周病が進行しているため、症状が落ち着くまでは約3か月~半年の時間を要します。
(2) 虫歯の悪化 抜歯後インプラント治療開始までの歯がない期間
《6~8ヶ月 :(炎症の治療 1~2ヶ月)+ インプラント治療 約半年間》
虫歯は、悪化してしまった歯のみの治療となり、歯周組織の再生や修復を待つ必要がないため、比較的早い段階で、インプラント治療に移行することができます。虫歯の悪化により歯を失ってしまった場合は、歯根の奥に虫歯菌が原因の炎症がないかを見極めたうえで、インプラント治療に移行できます。
もし、虫歯が元となる炎症が周りの歯周組織にまで広がっている場合は、炎症の治療が優先となります。インプラント治療個所の症状が落ち着くまでに1~2か月ほどの期間が必要となる場合があります。
(3) 歯根破折 抜歯後インプラント治療開始までの歯がない期間
《6~8ヶ月 :(炎症の治療 1~2ヶ月)+ インプラント治療 約半年間》
歯根破折の場合は、歯も歯ぐきも歯を支える歯槽骨も健康であることが多いです。しかし、歯の根っこが折れてしまうということは、噛む力が強かったり、歯ぎしりをしたりと歯が耐えられないような負荷をかけていることになります。
虫歯の場合と同様に、歯根や歯周組織に炎症があるとそちらの治療が優先となるため、1~2か月ほどの期間が必要となります。また歯ぎしり・食いしばりの癖を矯正するためのマースピースを作ったり、癖を矯正するための期間が設けられる場合もあります。
2.インプラント治療の流れ
一般的な治療法である2回法でのインプラント治療の流れは以下の通りです。2回法とは、手術が2回の手術が必要になるということです。
1回目:歯の根っことなるインプラント本体を埋入
2回目:埋め込んだインプラントを実際の歯につなぐためのキャップを装着
即時義歯で対応可能な期間(インプラント治療開始まで) | |
---|---|
検査 | 十分な骨の密度・厚みがあるかなどをチェック |
クリーニング | お口全体と、手術箇所の念入りなクリーニングと消毒 |
即時義歯で対応可能な期間《5か月強》 | |
1次手術 | インプラント埋入:インプラント体を骨に埋入 |
抜糸 | |
2次手術 | キャップの装着:歯肉の治癒を促進させ、外側につなげるキャップを装着 |
抜糸 | |
アバットメント装着 | 型取り:歯の芯となるアバットメント装着後の型取り |
仮歯の装着 | 仮歯の装着と噛み合わせ、歯の形などの確認 |
歯冠装着《完成》 | 上部構造(歯冠)の装着 |
現在インプラント治療は、一般的に2回法という治療法が行われ、2回の手術でインプラントの土台を形成していきます。
2回目の手術の傷跡が完治した後で、外から見える被せものの歯を装着して完成となります。患者さんの要望にもよりますが、治療開始から2回目の手術まで歯はありません。その期間は約3~5か月ほどです。
前歯は、よく見えるところなので、一時的なものを入れる場合があります。インプラントのようにしっかり噛める歯ではありませんが、見栄えには困らない歯としていくつかの種類があります。
3.歯がない期間の対応策
部位と患者さんのお口と歯の状態に大きく左右されますが、理想としては手術後の傷口が治癒し、インプラント手術がひと段落するまで、仮歯や入れ歯などでの対応は避けたいところです。しかし歯がないと、前歯であれば見た目が気になります。また、奥歯であれば機能面でも不便となるため、個々の患者さんに合わせた対応策があります。
半年間、全く歯がつけられないわけでなく、患者さんのご要望やお口の状況、隣の歯の状態によって、仮の歯となるものが用意できる場合があります。
(1)即時義歯(部分入れ歯)
歯がない状態で型取りをし、簡単な部分入れ歯を作成します。通常の部分入れ歯と同様に、歯がない部分の隣にある歯にクラスプと呼ばれるバネをひっかけて歯を支えます。どうしてもクラスプが外側に見えてしまうため、前歯では目立ってしまうことがあります。
また、部分入れ歯となってしまうため、自然歯と比較して噛む力は約15%となります。見た目を重視して入れる方もいますが、噛む力としてはあまり期待できません。
(2)ブリッジのようにセメントで固定
歯のない部分の隣の歯がブリッジの土台のようにすでに削られている場合、隣の歯を土台にして、歯のない部分へ仮歯を固定します。見た目にもわかりづらく、外れにくいものです。また、セメントで固定しているため、噛む力もある程度あります。
しかし、隣の歯が健康で全く削られていない場合、土台にするためだけに健康な歯を削ることは避けたいため、この方法は用いられません。
(3)隣接する歯に仮歯を固定
隣接する歯に接する面だけに接着剤を付け、仮歯を浮いた状態になるように固定する場合もあります。この仮歯は歯ぐきやあごの骨などの土台となる部分に全く接着していないため、両側の2点の支えのみとなり、空中で挟まれたように固定されています。そのため、軽い衝撃や食べ物の咀嚼などで取れやすいものです。
両隣の歯が健康である場合に、こちらの仮歯の固定方法が使われることが多いのですが、比較的簡単に外れてしまうことから、こちらを選択した後に、即時義歯に変更される方もいます。
4.インプラント治療のメリット
しっかりした土台の上にある歯で噛めるようになるまで、インプラント治療では長くて半年ほどしっかりと噛める歯がない期間があります。入れ歯やブリッジと比較すると、噛める歯がない期間も治療期間も長くなってしまうため、治療期間(しっかりと噛める歯がない期間)の長さがデメリットと感じてしまうこともあるでしょう。しかし、人工の歯の根っことなるインプラントはあごの骨と結合してしまえば、とても安定して長い間使い続けることができます。
正しいセルフメンテナンス、歯医者さんでのメンテナンスとチェックを定期的に受けることで、半永久的にご自身の歯と同じように使っていくことができます。ブリッジや部分入れ歯のように、隣接歯を支えにしないので、他の歯の寿命も長く保つことができます。
丈夫で長持ちし、安心しておいしいものを食べたり、大きく笑ったりできる治療法であるインプラント。歯を失ってしまった理由にも左右されますが、インプラント治療が開始してからは、歯が装着されるまでの歯がない期間は、半年ほどです。しかも、治療中の対応策として、仮歯や簡単な入れ歯を装着することも可能です。正しく処置をした後の、インプラントでストレスのない食生活、日常生活をずっと送り続けられることを考えたら、気になる長さではないのではないでしょうか。
いろいろな理由で歯を失ってしまいますが、歯がないことで生活に不便が生じたり、ストレスが溜まってしまうことは、みなさん一緒です。インプラント治療で始める快適な日常生活はいかがでしょうか。
プラザ若葉歯科では、インプラント治療に関する質問やご相談を電話やインターネットなどで受け付けております。気になることがある方は、遠慮なくお問い合わせください。