インプラント治療時は新型タバコを吸ってもいいの?

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暑さが本格になってきました。隣町川越市では、7月から9月まで音で涼しさを味わう「縁むすび風鈴」というイベントがあります。熱い中でも、涼しい気持ちになる風鈴を味わいに、川越市に足を運んではいかがでしょう。

さて、火をつけずともタバコを楽しめるiQOS(以下、アイコス)が大ヒットしています。川越市などの街を歩いても、アイコスを持っている人を見かけます。喫煙者ではない私も知っているくらいなので、相当知名度が上がっていることがわかります。実は、火を使わずに電気の力でタバコを楽しめるものにはアイコス以外にも種類があることをご存知でしょうか。

電子タバコ、次世代タバコ、加熱式タバコといろいろな名称で呼ばれていますが、ここではそれらを総称して新型タバコと呼びます。様々ある新型タバコ、タバコの害が軽いという情報もあるようですが本当なのでしょうか。

また、インプラント治療を受ける際には、必ず禁煙をする必要があるのですが、アイコスなどの新型タバコがインプラントの場合はどうなのでしょうか。タバコの害を復習しつつ、新型タバコとインプラントの関係性についても考えていきたいと思います。

1.加熱式タバコと電子タバコの違い

まず、新型タバコの中には、いくつかの種類があります。発熱や煙の有無、葉タバコなのか、液体タイプなのか、それぞれの商品で大きく異なるものです。日本呼吸器学会の見解では、葉タバコを燃焼させずに加熱することで発生するものを吸引するものを非燃焼・加熱式タバコと呼んでいます。一方で液体を加熱して吸引するものを電子タバコとしています。このブログ内でも、日本呼吸器学会の分類に従って、非燃焼・加熱式タバコと電子タバコを区別していきます。

(1)非燃焼・加熱式タバコ(アイコス等)

アイコスに代表される加熱式タバコ。コンビニなどでも対応したタバコを売っています。売っているものは、それぞれの商品に対応した専用のタバコです。加熱式タバコに使われる専用のタバコは、短くカットされた従来のタバコそのもの。タバコの持つ有害成分である、タールやニコチンなどはそのまま引き継いでいます。

燃やさないため、煙も発生せず、受動喫煙の観点から見てもメリットがあると思われがちですが、決してそんなことはありません。受動喫煙についての健康リスクについての科学的証拠を得るには、まだまだ時間が必要なようです。

(2)電子タバコ

液体(リキッド)を加熱するタイプのものを電子タバコと分類することが多いようです。(メディアなどでも呼称に統一がされていないため、一概に言い切ることはできません)日本では現在、医薬品医療機器法(旧 薬事法)による規制により、ニコチン入りの液体(リキッド)の発売は許可されていません。日本国内において発売されている電子タバコ用の液体には、ニコチンが含まれていません。ニコチンが含まれていないものは、フレーバーやビタミンなどの栄養素を取り入れる物として、「吸う美容液」と売り出しているものもあるそうです。海外ではニコチン入りリキッドが販売されているため、個人輸入などで取り寄せることも可能です。

また、このタイプのタバコには、リキッドを補充できるタイプや、リキッドの入ったカートリッジを交換するタイプ、使い捨てタイプなどがあります。リキッドを揮発する際に煙を出すものもあるそうです。

2.タバコの害

タバコの害として代表されるものにはタール、ニコチン、一酸化炭素があります。簡単にそれら代表3選手の悪影響をおさらいします。

(1)タール

細かい粒子でできている有害物質の集合体で、タバコの煙に含まれる発がん性物質を多く含むものの総称です。粘り気があり、フィルターや歯にも茶色い色が付着させます。このタールは一般的に「ヤニ」とも呼ばれており、茶色く粘着性が高いため、喫煙者の部屋では壁や天井が黄色く汚れてしまいます。煙にさらされるところすべてに付着することから、タバコを吸った人の肺全体がこのタールで汚され、がんのリスクを高めてしまうものです。

(2)ニコチン

発がん物質は含まれないとされています。しかし、神経系の影響や、血管へ大きく影響を与えます。具体的に言うと、ニコチンには一種の興奮状態を引き起こす作用があります。そのせいで、一時は頭がすっきりしたりスムーズに仕事が進められたりします。ですが、強い依存性があるため、ニコチンの作用が切れてくると、禁断症状のようなイライラが出てしまうのです。タバコを吸って落ち着くというのは、この禁断症状を抑え、ニコチンを待っている脳に餌を与えるからなのです。

また、血管に対しては、末梢血管の収縮や手や足の血流量の減少をひきおこします。血管の壁にダメージを与える作用もあるため、心臓への負担や動脈硬化のリスクを高めます。

(3)一酸化炭素

酸素を体の隅々にまで運ぶヘモグロビン。一酸化炭素はヘモグロビンと結びつく性質があるので、タバコを吸うと血液を通して全身に酸素を運ぶ代わりに一酸化炭素を運んでしまうことになります。タバコを吸っていると、一酸化炭素が全身に充満してしまい、体が酸欠状態になってしまいます。

練炭自殺など密室で物を燃焼させて、死に至るニュースがありますが、それは一酸化炭素中毒によるものです。体に酸素が回らなくなると、徐々に体がそれぞれの部分が機能しなくなってしまいます。

3.タバコがインプラントに与える悪影響

インプラント治療は、歯を支えている顎の骨に穴を空けて、チタン製の人工物を歯の根っことして埋め込むものです。その上に、アバットメントと呼ばれる接続部をはめて、さらに人工歯を被せて治療を行います。

一番重要なポイントは、チタン製のインプラント体を顎の骨に埋め込み、骨とインプラント体を結合させることです。チタンは骨と強力に結びつくことができ、人体に悪影響を及ぼすことがありません。さらに骨には回復する機能があります。チタンが骨に結合する力と骨が修復する力をつかい、安定した人工歯根を作り出すのです。

顎の骨に穴を空けてインプラント体を埋め込みますが、その後は骨の回復とインプラント体と結合する機能とが一緒になり、強固にくっついていきます。インプラント周囲に回復しようとする骨の組織が集まり、密着していくのです。そこで大事な力が自分で骨を再生する力。

傷の治りと同様に骨の再生も、高齢者より若い世代の方が早いです。折れた骨の直りが若者の方が早いという原理と同じです。若者は新陳代謝が活発に行われているため、新しいものを再生する力が早いということです。

インプラント治療は折れた骨を修復するような働きで、インプラント体を顎の骨に固定していきます。新陳代謝が活発に行われていると、顎の骨の組織とインプラント体との結合も早いのです。タバコは血流の動きを不安定にさせ、酸素を運ぶ力を弱めてしまいます。血管が収縮したり、血管の壁を攻撃したり、必要な部分への酸素供給不足がおこることで、傷の治りだけでなく、インプラント体が顎の骨に結合する働きを阻害してしまうのです。

4.新型タバコとインプラント

新型タバコには、加熱式タバコと電子タバコと分類があるとお話ししました。この分類をしたうえで、さらに日本での購入に限定するならば、インプラントへの悪影響があるものはアイコスに代表される加熱式タバコと考えることができます。現在日本で発売されている、電子タバコにはニコチンが含まれていないので、電子タバコによるニコチンの悪影響はないと言えるでしょう。また、これら新型タバコは燃焼しないため、一酸化炭素の害からも体を守ることができます。

しかし、加熱式タバコでも電子タバコでも様々な有害物質が含まれているタールに熱を加えて蒸気化したものを、体に取り入れているということは変わりません。また、それぞれの新型タバコによるタバコの害についての科学的検証は、まだ結果が出ていないものが多いです。

しかも、名称が統一されていないことから、ここでお話ししているように電子タバコが「液体を気化させたものに限定される」ということでもありません。電子タバコならば、害はないと断言することはできません。

個人的感想などをブログに書いている方も多くいますが、結論から言うと新型のタバコもインプラントに及ぼす影響がはっきりと解明されていないため、インプラント治療が完全に終わるまでは、禁煙を続けることをお勧めします。また、インプラント治療後であっても、タール内に含まれる有害物質が体の免疫力を低下させたり、ニコチンの毛細血管への負担などで、体のもつ殺菌作用が弱められることが考えられます。

5.インプラント治療時は新型タバコも含めた禁煙を

インプラント治療は、体に金属を埋め込む手術です。顎の骨とチタン製のインプラント体が完全に結合するまでは、どのようなタバコも避けた方がよいのが賢明です。タバコには、血液の循環や治癒能力の力を弱める働きがあるので、傷が自然に修復していく力が発揮できなくなるのです。

インプラントが早く安定して、自然な歯のような働きができるために、この期間は特に禁煙にしておくことが賢明です。

アイコスに代表される加熱式タバコは、煙がないだけで従来のタバコと有害成分はほとんど変わらないと言えます。今後、臨床データなども少しずつ解明されていくと思いますが、害が少ない、周りへの影響もないなどという情報を鵜呑みにしないでください。インプラントは、体が治癒しようとする働きを使った治療法です。治癒する力が弱まれば、傷の治りも遅くなります。

体の治癒力を高めて、インプラントが安定できるように、少なくとも治療中は禁煙してくださいね。また、インプラントを機に、完全に禁煙が最高ですね。

私たちは、美味しく食べる毎日を応援するプラザ若葉歯科です。

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